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AMaGi
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YouTube:@AMaGi_TEYPC
著者:AMaGi
「TENKU MOBILE S10」は、話題となったN100プロセッサーを搭載したウルトラモバイルPC(UMPC)。主なスペックはインテル®プロセッサー N100、16GBメモリー、 インテル® Core™ UHD グラフィックス、1TBのSSD、OSはWindows 11 Homeを搭載しています。
外観
左:視聴スタイル 右:タブレットスタイル
本体のみでは913g
まずは外観から。「TENKU MOBILE S10」の本体サイズは、幅約244×奥行き約166×厚さ約18.5mmで、重量は913g、充電器を合わせると1.07kg。本体は1kgを切っていますのでモバイルPCとしての軽量な部類になるでしょう。
本体はCN削り出しボディで、とてもスタイリッシュなデザイン。天板にメーカーの刻印すらないシンプルさが特長で高級感があります。モニター上部にはWebカメラが搭載され、モニターの下部にTENKUのロゴが入っています。
裏面も同様にシンプルに纏まっており、吸気口がかなり大きくとられています。スピーカーは裏面の端の方に開口部がとられ、音質は内臓スピーカーとしては標準的。真下ではなくエッジのカーブに合わせて開口部がとられおり音が広がりやすいためか、クリアで聞き取りやすい印象でした。
画面明るさ | 0% | 10% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% | 70% | 80% | 90% | 100% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
輝度(cd/m2) | 8 | 19 | 48 | 75 | 103 | 129 | 164 | 190 | 218 | 245 | 270 |
画面明るさの調整範囲。ほぼ等間隔で調整範囲は広い
ディスプレイは10.51インチの10点マルチタッチ対応で、解像度は1920×1200、アスペクト比は16:10を採用。動画を見たり、ウェブブラウジングといった一般的な用途はもちろんのこと、縦に少し長いのでFHDコンテンツを表示しながらタスクバーやメニューバーを表示できるのが特徴です。ベゼルは約9mmと極狭ではないですが、WEBカメラがしっかりと搭載されています。光沢パネルのため映り込みはありますが、その分画面の発色がいいのがポイント。視野角も良好で斜めから見ても色の変化はほとんどありません。輝度は8~270cd/m2と最大輝度は標準的ですが、よほど明るい場所でなければ画面が暗く感じることはありません。最低輝度もしっかりと下げることができ、ほぼ等間隔で細かな調節が可能でした。
2 in 1 スタイルで画面は360°開くことができ、山型にして動画を視聴したり、完全に折り畳んでタブレットとして使うことも可能です。重力センサーは搭載されていますが、重力センサーは画面の開き具合を検知して切り替わる仕様となっていました。
約270°まで開くと自動的に重力センサーがオンになりセンサーに従って画面が回転しますが、約180°まで戻すと自動的にセンサーがオフになり、もとの表示に戻ります。そのため使用する角度によっては一度オーバー気味に動かしてから元に戻すといった操作が必要になります。画面を開くとWindowsのモードも自動的にタブレットモードに切り替わりました。また、画面を閉じるときも約30°まで閉じた時点で画面を閉じた判定になり、スリープに入ってしまうため、スリープに入ってほしくないときは画面を閉じすぎないよう注意しましょう。
最近はどこでも仕事ができる時代、本機に搭載されているWebカメラは解像度は200画素の30fpsで、Web会議等のビデオ通話を全く問題なく使用できる画質でした。カメラの位置も一般的なノートパソコンと同じ画面上部の中央にあるため、相手に違和感を与えることなく通話可能です。
テンキーレスのフルキーボードだが、キー配置は一部特殊
キーボードはテンキーレスの日本語配列でキーピッチは約17.8mm、キーストロークは1.4mm。バックライト搭載で暗いところでも快適にキー入力が可能です。キー配置は少し特殊なため慣れは必要ですが、このあたりはUMPCの宿命ですね。キー配列は好みがあると思いますが、UMPCは英字配列のモデルが多いですので個人的には日本語配列の選択肢が増えてうれしいです。
左:付属の充電器、右:出力は12V固定
付属の充電器は36W(12V/3A)出力の充電器でマルチボルテージ対応。コネクターはUSB Type-Cですが、USB PDの規格ではなく、12V出力充電器です。フル充電までの時間は約2時間でした。
ただし、本機はUSB PDに対応していますので、サードパーティのPDでの充電動作チェックをしてみました。 PDは相性がでやすいため、20種類程の充電器で充電状態をチェックしましたが、充電器の出力は12V/2A以上もしくは15V/1.2Aを推奨します。それ以下の出力の場合うまくネゴシエーションしなかったり、ネゴシエーションされていても操作をすると充電状態が解除されたりとかなり不安定なものが多かったです。同じ18Wでも12V/1.5Aは不安定で15V/1.2Aは問題ありませんでしたので、18Wよりも出力が大きいほうが安定して使用できると思います。最近は高出力のACが安く手に入るので、高出力のタイプが良いです。また同じくモバイルバッテリーでも18W以上の出力でも、ラインナップも豊富に存在しますので、外出中でも気軽に充電できるのはうれしいですね。
TENKU MOBILE S10(左)とOneMix4(右)の外観比較、ぱっと見では瓜二つ
TENKU MOBILE S10(下)とOneMix4(上)の外観比較、TENKU MOBILE S10のほうが一回り大きい
本機とそっくりな「OneMix4」とも比較してみたが、本機のほうが一回り大きく、少しずっしり感があります。OneMixシリーズはUMPCの代表機種ですが、性能や機能が盛り込まれたプレミアム機ですので決して安くはなく、なかなか手が出せなかったという人も多かったのではないでしょうか。性能や機能には差がありますが、外観は本当にそっくりで、「TENKU MOBILE S10」はOneMixシリーズのコストパフォーマンスモデルといっても過言でないほど似ていました。
左側面にヘッドホンマイク兼用端子、右側面には電源ランプ、電源ボタン、USB3.1(Type-C)×2、充電ランプ
つぎにインターフェース周り。本体の左側面にヘッドホンマイク兼用端子のみ。右側面には 電源ランプ、電源ボタン、USB3.1(Type-C) ×2、充電ランプを搭載しています。薄型モデルのため標準サイズのUSBを直接挿すことはできませんが、 USBは2ポートあり、どちらのポートも充電に対応したフル機能のUSBですので、充電中も拡張性は損なわれません。altDPモードにも対応しているため映像出力も可能で、同時出力もできました。
ただし、USBポートは片側に隣接していますのでUSBメモリーなど本体に直接挿すタイプのデバイスを使用する際はデバイスのサイズに注意が必要です。横幅が大きいとUSBを2ポート同時に使用することができません。カードスロットも搭載されていませんので、SDカードリーダー機能内蔵のUSB Type-Cハブを1つ持っておくとどちらにも対応できて安心かもしれません。
「HWiNFO64」で確認したサマリー。CPUは4コア/4スレッドのインテルN100を搭載
そして性能評価。「TENKU MOBILE S10」に搭載されているインテルN100はGracemontアーキテクチャのAlderLake-Nモバイル向けCPU。4コア/4スレッドで、動作周波数は1.8GHz (最大3.4GHz)、TDPは6~10Wとなっています。インテルCore iシリーズにも搭載されているコアのうち、省電力を重視したコアのみを搭載したCPUですね。内蔵GPUは12世代のインテル UHD グラフィックス が搭載され、最新のAV1をはじめ、VP9やH.264、H.265/HEVCといった現在主流の主要なビデオコーデックはすべてサポートしています。
CINEBENCH R23の結果
モデルNo.(製品名) | シングルスコア | マルチスコア |
---|---|---|
N100 4C4T (TENKU MOBILE S10) |
906 | 2828 |
Celeron N5100 4C4T (TENKU Comfortbook15) |
578 | 1465 |
Core i5-8250U 4C8T (IdeaPad 720S) |
904 | 3123 |
Core i7-1160G7 4C8T (OneMix4プラチナエディション) |
1240 | 3596 |
各種CPUの比較
まずはCPUの性能から見てみましょう。定番の「CINEBENCH R23」のスコアはシングルが906pts、マルチが2828ptsという結果になりました。他のCPUとの比較の表も作ってみましたが、このCPUの1世代前のモデルにあたるCeleron N5100(4コア/4スレッド)と比べてシングルが1.5倍、マルチは2倍と大幅な性能向上がみられます。Core i5-8250Uと比べてもマルチ性能が少しが低い程度で、新しいコーデックに対応している分、N100のほうが実使用時の快適さでは一歩優勢ではないでしょうか。さすがにCore i7-1160G7には及びませんでしたが、N100はエントリーモデルとは思えないほど高性能なCPUです。
PCMark 10の結果
続いてパソコンの総合的なパフォーマンスを見る「PCMark 10」。総合スコアは「3083」という結果になりました。細かく見てみると日常作業の性能を表すEssentialsが「6990」、ビジネスの生産性を表すProductivityが「4725」、クリエイティブ性能を表すDigital Content Creationが「2410」となっています。スコアの基準は、一般的なPC向け:Essentialsが4100以上で快適、オフィス業務や簡単なメディアコンテンツ制作向け:Productivityが4500以上で快適、デジタルコンテンツ編集向け:Digital Content Creationが3450以上で快適です。
N100 は低消費電力モデルながら、多くの用途を快適にこなせる性能を持ち合わせているCPUですね。さすがにクリエータータスクは快適とまではいきませんでしたが、軽い写真編集やカット編集くらいの動画編集ならできてしまうのではないでしょうか。
「CrystalDiskInfo」のストレージ情報。PCIe3.0×4接続の1TB SSDが搭載されている
「CrystalDiskMark」ではシーケンシャルリードが3.5GB/s弱と規格の上限速度がでていた
メモリー容量はN100に搭載できる最大容量の16GBで、シングルチャンネルのLPDDR5-3200。ストレージはPCIe3.0×4接続の1TBのSSDが搭載されています。メモリーはシングルチャンネル、ストレージもPCIe4.0に非対応ですが、これはN100の仕様によるものです。容量は共にしっかり確保されていますので、N100の性能を限界まで発揮できる豪華な構成になっています。
ストレージ性能をみるために「CrystalDiskMark」を測定しましたが、シーケンシャルリードが3.5GB/s弱とPCIe3.0×4のほぼ上限まで出ています。大きなファイルでランダムアクセスやミックステストに低下がやや見られましたが、実使用においストレスを感じることはまったくありません。
「HWiNFO64」で確認したサマリー。GPUは24EUのインテル UHDグラフィックスを搭載
内蔵GPUは第12世代のインテル UHD グラフィックスが搭載され、最新のAV1をはじめ、VP9やH.264、H.265/HEVCといった現在主流の主要なビデオコーデックはすべてサポートしています。YouTubeなどの動画ストリーミングや4K動画の再生も問題なく快適に視聴可能でした。
このクラスのノートパソコンでゲームをする人は珍しいと思いますが、3Dの性能を見るために「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」「ファイナルファンタジーXV」「BLUE PROTOCOL」でゲーム性能も測定してみました。
「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」の結果。左:HD画質、右:フルHD画質
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」の結果。左:HD画質、右:フルHD画質(標準品質のみ)
「ファイナルファンタジーXV」のHD画質での結果
「BLUE PROTOCOL」のHD画質での結果
ドラゴンクエストXやブラウザゲームくらいの軽いゲームであれば普通にプレイできそうですね。フルHDでも設定を落とせば普通にプレイ可能です。ファイナルファンタジーXIV:クラスでもHD画質で設定をしっかり絞れば普通評価でした。ファイナルファンタジーXVやブループロトコルのような重ためのゲームではHD画質の軽量品質でも動作困難の判定となりかなり厳しい印象です。エントリーモデルかつシングルチャンネルメモリーという構成でファイナルファンタジーXIVがプレイできると思っていなかったので、エントリーモデルだからといって侮れないほどグラフィック性能も大きく進化しています。
消費電力の測定にはUSBチェッカーを用いて、実際の消費電力を測定
最後に動作中の消費電力と温度を測定してみました。消費電力はスリープ時で約0.5W、アイドル時(JEITA 測定法 3.0 準拠)で約7~8W、4K動画視聴時(JEITA 測定法 3.0 準拠)で8~11W。CINEBENCH R23等ベンチマークソフト実行中でも21~23W(瞬間最大25W)とかなり省電力です。最近の電気代高騰を考えると少しでも電気代を抑えられるのは家計にも優しいですね。
バッテリー駆動時間はJEITA 測定法 3.0 準拠のテストで動画再生時約3.2時間、アイドル時約4.5時間とやや心もとない動作時間でした。バッテリー容量が28.8Whと小さめですが、幸いにも前述の通り充電器の要件は低いですので、長距離移動時はモバイルバッテリーがあると安心かもしれません。
サーモグラフィによる温度測定。アイドル時はわずかに温かくなる程度
ベンチマーク実行中の温度。表面温度はそこまで高くないが、筐体が金属のため熱く感じる。
また動作中の温度も気になるところ。室温27度の環境下で「HWiNFO64」によるCPU温度のモニタリングとサーモグラフィによる表面温度の測定をしてみました。
CPU温度はアイドル時で45度前後、4K動画再生時は読み込み時に60度近くなったものの再生中は50度前後で安定。電源接続しながらのベンチマーク実行時でも70度前半としっかりと冷却できています。本体表面はアイドル時で30度前半、ベンチマーク実行中でも30度台に収まっていますので薄型のノートパソコンとしては低い温度です。裏面は40度以上になりますがかなり発熱は抑えられていると思います。ただ筐体が金属のため熱伝導率が高く、発熱している部分を触れるとやや熱く感じました。同じ表面温度でも素材によって熱の感じ方が異なるため、これに関しては金属筐体の宿命ですね。決して温度が高すぎるというわけではありませんので、その分筐体全体でしっかりと冷却できているととらえる方が自然かと思います。キーボード入力をする際手が触れる部分はそこまで熱くなりませんので、文字入力に関しては快適です。
ストレージ温度もアイドル時で約40度、「CrystalDiskMark」実行中でも最大60度とそこまで発熱の大きなSSDではありませんでした。
個人的に特にアピールしておきたいのが動作音の静かさです。動作中のファンの音は耳を近づけなければ気にならないレベルで、50度以下では動作音を感じませんでした。製品ページには記載がありませんでしたが、おそらく一定温度以下はファンレスになるセミファンレス仕様なのではないでしょうか。発熱が少ないCPUの採用に加え、金属筐体かつ背面に大きく吸気口を設けるなど徹底した放熱設計により、静かな環境でも問題なく使用できる動作音に抑えられています。静穏性重視の方にもおすすめの1台です。
希薄となったエントリーモデルUMPCを補う1台
最近は1kgを切るノートパソコンも珍しくはなくなってきましたが、一般的なノートパソコンは13.3インチや15.6インチとサイズが大きくなりがち。10.1インチというサイズはカバンにもスッと入るサイズのため、出張など持ち運ぶ機会の多い人には重さだけでなくサイズも重要なポイントです。デザインがシンプルで高級感があるので仕事でもプライベートでも使いやすいですし、ステッカーなどでおしゃれにアレンジするのにも向いています。
「TENKU MOBILE S10」は軽量コンパクトながら、必要な性能や拡張性はしっかりとおさえながら、8万円代とコストパフォーマンスに優れるPCです。最近のUMPCはゲーミングを意識したハンドヘルドタイプのハイエンド機ばかりで、クラムシェルタイプや手頃な値段のものがなくなりつつありました。本機はその希薄になったエントリーモデルのラインナップをしっかりと補ってくれる1台ではないでしょうか。軽量コンパクトなUMPCが欲しかったけど、安いものは性能があまりにも低く、しっかり使える性能のものは高い…。そんな最近のUMPCのイメージを払拭し、UMPCがぐっと身近に感じられるようになった製品でした。
UMPC本来の手軽にぱっと使えるパソコンとして非常にバランスの取れた製品ですので、UMPCの入門機としておすすめです。
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